第18回 研究会「言語行動における認識と理解ー聞き手はどう理解/共感するかー」2019.7

日時:  2019年7月13日(土)13:00~17:30 (懇親会:18:00~19:30)

会場: 青山学院大学14号館(総研ビル)9階第16会議室

テーマ: 「言語行動における認識と理解ー聞き手はどう理解/共感するかー」

「言葉」は基本的に「言語行動」という具体的事実として在る。「発話」は特定の場面での特定の主体(話し手)による表現、また、聞き手の理解として成立する。今回は話し手が認識内容を、この場面で特定の意識状態の下に発話し、それを聞き手がどう理解するか、までの総体を考察の対象とする。言語表現は「客体化された(詞的)表現」と、話し手の意識状態を直接的に示す「主体的/主観的(辞的)表現」に分けられる。後者は「心の声」とも呼ばれ、周辺言語や非言語表現とつながるもので、言語の違いを超えて出現し発達して来た歴史を持つ。現在、解明の急がれる聞き手の理解/共感について考える上で見逃せない出発点である。今回の討議では日本語の場合の考察を通し言語一般に共通する普遍的な問題を扱った。

 

プログラム内容

  • 研究発表

(口頭発表)

・山本裕子氏(愛知淑徳大学)「中国人日本語学習者の共感的言語行動-日本語母語話者との会話データから比較して−」 要旨

馬莎氏北京外国語大学北京日本学研究センター 修士課程)「時間副詞の情意性-イマサラにおけるテンポラルな意味とモーダルな意味-」 要旨

(ポスター発表)

木野緑氏(早稲田大学日本語教育研究センター)「発話促進と共感を得る聞き手の応答-『定式化』発話に注目して-」 要旨

山本綾氏(昭和女子大学国際学部 )「英語母語話者と日本人英語学習者による理解の表明―“I know”か“I understand”か―」 要旨

山口真紀氏・野原佳代子氏(東京工業大学 博士後期課程・教員)「母語で読む古典と現代日本語で読む古典の解釈の違い―外国人研究者による古典文読解法選択の背景―」 要旨

池田來未氏(お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科 博士後期課程)「複合動詞「~アゲル」の史的変遷―〈完遂〉用法の獲得に着目して―」 要旨

呉慶霞氏(早稲田大学文学研究科 博士後期課程)「とりたて副詞「ただ」の意味用法―中国語の“只(是)”との比較対照―」 要旨

  • 講演(1) 石黒圭講師(国立国語研究所)

「中国語母語話者のフィラー使用はどう変わっていくか
―日本語会話における話し手の思考の言語化と聞き手への影響―」(45分)

学習者の日本語は、話している言葉は日本語なのに、間に入るフィラーは母語になりやすく、それが日本人の耳に障ることがある。本講演では、中国人日本語学習者を対象に、フィラーが学習経験とともにどのように変容するか、その実態を明らかにし、日本語教育の指導に生かす方法を議論した。 概要

 

  • 講演(2) 佐良木昌講師(明治大学研究・知財戦略機構/NPO言語研究アソシエーション)

「言語過程説における場面論―拓かれ開かれる場面―」(45分)

時枝誠記の言語過程説における場面とは、話手と聴手とが、ともに言語的表現行為を為す場所であり、そこに拓かれ開かれる表現世界なのである。時枝場面論について、その確立過程を追跡しつつ意義と限界について論じた。 概要

  • 全体討議(55分)

プログラムは前半が口頭発表とポスター発表、続いて講演2件と議論を行うという初めての形をとりました。会場は満員となりました、ご来場いただいたみなさまに感謝申し上げます。

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世話役:秋元美晴・志賀里美・山田昌裕(恵泉女学園大)・氏家洋子(北京日本学研究センター)・高橋圭子(フリーランス)・竹内直也(相模女子大)・名塩征史(広島大)・野原佳代子(東工大)・山本史歩子(青山学院大)

研究会の開催にあたり、今年は以下のみなさまに補助員としてお手伝いいただきました。世話役一同より心より感謝申し上げます:宇城かおり(恵泉女学園大・院生)・卜凡輝(恵泉女学園大・院生)・邱佳瑩(北京日本学研究センター院 生)・齋藤匠(東工大・院生)・劉 志毅(早稲田大・院生)・和田千寛(東工大・院生)