日時: 2013年11月23日(土・祭)13:30-17:00
会場: 恵泉女学園大学
テーマ: 日本語の理論的分析と教育
日常的に使われている日本語表現の中にも、分析が不明確・不十分だったり学習者に活用方法を示せずにいたりするものがある。 その具体例を取り上げ、理論的分析と教育法の現状および問題点を明らかにし、両者を突き合わせ検討することによって、それぞれの深化と新たな展開を図る。
プログラム内容
講演「理論的研究と日本語教育の接点を求めて―「のだ」の教え方を例に―」
庵 功雄 講師(一橋大)
日本語学と日本語教育の関係が疎遠になってから久しいが、このことは両者にとって不幸なことである。本発表では、日本語学建学の精神に立ち返って、「日本語教育に役立つ文法記述」という観点からした文法記述を「のだ」を例に考えたい。
日本語学的観点からした「のだ」の研究は膨大な量があるが、その大部分は、「理解レベル」の記述、すなわち、所与のテキストを題材に、「なぜここで「のだ」が使われたのか」を「説明」することを目指したものである。もちろん、そのことに意味がないわけではないが、日本語教育のための文法としてはそれでは全く不十分である。なぜなら、そうした「理解レベル」の言語知識が明らかになったとしても、ある具体的な状況において、「のだ」を使うべきなのかどうか(言い換えれば、日本語母語話者はどういう場合に「説明」を行うのか)ということが明らかにならない限り、上記のような意味の「説明」は、「産出レベル」のものとしては、全く「説明」になっていないからである(しかし、残念ながら、日本語学的研究では、この事実すら認識されていないように見える)。
本発表では、「産出レベル」の記述として、「のだ」の用法を整理し、「日本語教育のための文法」として必要な観点について考えたい。
研究発表
- 日本語と韓国語のあいづち使用についての一考察-韓国人学習者に注目して- 山本花江
- 発話の偶発的側面を起点とする相互行為的トピック推移 犬飼亜紀
- 複合動詞の名詞化の意味特徴に関する一考察 志賀里美・竹内直也
- 化学専門用語「高分子」「低分子」の非対称性に関する一考察 高野明彦
- 「あれら」の人称指示から事物指示への転換について 竹内直也
- 日本語教育における非対面コミュニケーションの取扱いに関する一考察 佐々木泰子・船戸はるな・佐々木實雄
- 主体的表現「やはり/やっぱり」の示す「既成観念への回帰」の意:近現代の日本語辞書・和英辞書の記述と‘after all’ 加納麻衣子
- 初級日本語学習者に導入すべき副詞125語の選定-母語話者の使用実態を通して- 島崎英香
- 知覚情報の整理と訓練法――翻訳作業から考える 高橋さきの