第17回 研究会「主体的/主観的 表現とその周辺」2018.9

◎今回は2014年以来5年にわたり「言語行動」について考えて来た集大成として、言語学・英語学、並びに、日本語学・日本語教育の研究者お二方をお迎えしました。また、本研究会初の飢渇として、日英・日仏・日中の言語対象による口頭発表も行い、例年どおり、両講師と参加者全員での討議の時間も設けました。

テーマ「主体的/主観的 表現とその周辺」
日本語の場合と他言語の場合「発話」は特定の場面での、特定の主体(話し手)による表現、また、聞き手の理解として成立する。話し手はこの場面の中で、特定の意識状態の下に発話することになる。発話は「客体化された表現」と、この意識状態を反映した「主体的/主観的 表現」から成る。この5年間の議論から、話し手の意識状態を直接的に示す「主体的/主観的 表現」は言語の違いを超えて出現するものであり、その表現方法も発達しつつあることが明らかになって来た。この状況を日本語、他言語双方を対象とし、「主体的/主観的 表現」をどう理解するかを併せて考える。
日時: 2018年9月29日(土)12:50~17:45 (懇親会:18:15~19:45)
会場: 青山学院大学 17号館5階11教室
プログラム内容

1.研究発表(90分)
①黒滝真理子氏(日本大学)
「主観的把握と〈自己のゼロ化〉―日英語のモダリティをめぐって―」概要
②牧 彩花氏(東北大学大学院生)
「日仏人称詞と主観性」概要
③市原明日香氏(お茶の水女子大学大学院生)
「日中の母語場面と日本語接触場面のロールプレイ会話にみる感謝の談話展開」概要

2.講演:秋元美晴講師 [日本語学・日本語教育] (恵泉女学園大学)(50分)
「形容詞の機能――連用形の副詞的用法の観点から――」
装定用法で使われる形容詞が連用用法で使われる時、形容詞本来の意味がどの程度薄れ、どのような用言と共起し、共起関係を広げていくのか、また、その過程で強調用法となり、さらに進んで、主観的意味合いを帯びるようになるのかを明らかにする。講演概要

3.講演:池上嘉彦講師 [言語学・英語学] (東京大学・昭和女子大学)(50分)
「日本語話者好みの<主観的把握>」
「主観的」(subjective)という語は言語学でもよく術語として用いられるが、その概念内容は必ずしも同一ではない(と同時に、相互に無関係というわけでもない)。その中で、認知言語学で(話者による)「主観的把握」(subjective construal)と呼ばれる概念をとりあげ、実は日本語話者は、発話に際してこの「主観的把握」と呼ばれるスタンスを好んで採るということ、そして、そのような振舞い方(「行動」)が「日本語らしさ」の生み出される一つの要因となっているということを検討する。講演概要

4.全体討議(60分)

  • 世話役:秋元美晴・志賀里美・山田昌裕(恵泉女学園大)・氏家洋子(北京日本学研究センター)・高橋圭子(フリーランス)・竹内直也(相模女子大)・名塩征史(静岡大)・野原佳代子(東工大)・山本史歩子(青山学院大)
  • 研究会の開催にあたり、今年は以下のみなさまに補助員としてお手伝いいただきました。世話役一同より心より感謝申し上げます。補佐役:劉 犀灵、姜 柳(北京日本学研究センター院生)・呉 慶霞(早稲田大・文・院生)・宇城かおり(恵泉女学園大・院生)・古田島聡美 (YMCA健康福祉専門学校)